風が寝息をたてる午後

走り出す理由

車検を終えたバイクにまたがり、エンジンの手応えを確かめながら東へと向かう。向かう先は猪苗代、あの静かな湖のほとり。

くじら島の色

道中でいつも目を奪われる場所がある。あの島を、僕は勝手に「くじら島」と呼んでいる。スノーシェードの形が、くじらの歯のように見えるからだ。

夏が深まるにつれ、その緑の濃さは一段と増していた。まるで、湖を泳ぐ影が濃くなったように見えた。

森への入り口

湖畔沿いの道を外れ、森の中の細い小道を歩く。誰にも教えていない秘密の場所。今日も静かにそこは待っていてくれた。

かつてここでキャンプをした。SUPで沖に出た日もあった。今日は、ハンモックを張って昼寝をすることにした。

木漏れ日のトンネル

ふたたび森の奥へ。足元には枯葉と小さな芽吹きが交じり合う。風の音に混じって、遠くで波がさざめいている。

静けさのなかで

柔らかな日差しと、揺れるハンモックのリズムが、境目をあいまいにしていく。

撮影したのは、旅の記憶に重なるもの。モノを写しているようで、写っているのは時間そのものだった。

帰り道を考えずに

どこにも急がず、誰にも知らせず。しばらくは、ただ風の音だけを聴いていた。

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